パイプづくりが育んだ職人仕事。

MATSU Cane & Walking Stickは下町情緒漂う東京の東でつくられています。工房の名は、柘製作所。
世界の好事家を唸らせる喫煙具の名門老舗です。呱々の声をあげたのは1936年のことでした。



加賀の刀匠、兼若の血を引く柘恭一郎ははやくに両親を亡くし、シガレットホルダーの工房に丁稚奉公します。晴れて独立するも出征、銃後の妻、玉江は乳飲み子を背負って銃床を磨いたといいます。戦後復員を果たした東京ではシガレットホルダーに必要な象牙が思うように手に入りません。恭一郎はマッカーサーのおかげで人気に火がついたパイプづくりに乗り出し、最盛期には120人の職人を抱えました。

1950年代、パイプの主たる原料であるブライヤーの輸入が可能になると、恭一郎は先んじて世界中のサプライヤーとコンタクトをとって仕入れルートを確保、返す刀で腕利きの職人をヨーロッパへ送り込んで最高峰のものづくりを学ばせました。いまや天下に英名が轟くIKEBANA(パイプのフラッグシップモデル)の作家、福田和弘もそのひとりでした。

古き良き生産の構えを堅持する柘製作所はますます円熟味を増しています。1000分の1ミリに迫る寸法精度、杢目をくっきりと浮かび上がらせるハンドフィニッシュ──パイプづくりで鍛えられた技はMATSU Cane & Walking Stickにも存分に振るわれています。